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古屋レポート
 このページはメガネやレンズについての情報や、個人的な見解をご紹介するコーナーです。お客様・同業者・業界関係者の方へ何かの参考になればと思います。
ご意見やご質問などございましたらお気軽にお問い合わせ下さい。快適・最適なメガネのご提案の為にお役に立ちたいと思います。
『れんず屋』代表 古屋 和義
レポート 2022年2月17日『3mm 1.60素材 耐衝撃テスト』

3mm厚1.60素材レンズの耐衝撃テスト
『目の保護をもっと身近にする、発見と検証について』

発見??『良いレンズが見つかりました。』
今まで、耐衝撃性がないと思われた通常の眼鏡レンズも、ある『条件』で耐衝撃レンズの機能を発揮しました。そのレポートです。

WileyX 土釜氏(元空自)と、古屋(元陸自)の共同検証です。


1 検証!『1.60素材』が耐衝撃レンズに???

一般に「耐衝撃レンズ」は『ポリカーボネイト(1.59素材)』『トライベックス(1.53素材)』が有ります。
『1.60素材のレンズ』は通常の状態では全く耐衝撃性能は持っていません。一般的なメガネレンズは127cmの高さから、「鉄球35g」を落とすと破損しますし、サバゲーでBB弾が当たれば即大破します。
※前回の耐衝撃実験(古屋レポート2015年12月28日)についてはコチラ
眼鏡店としては当然『1.60素材』では耐衝撃レンズとしての性能はないと考えていましたが、 『ある条件』を満たすことによって格段に強度が増し、耐衝撃レンズとしての用途に対応できることをご報告します。


2 検証に使用するレンズ・フレーム

  • 実験検証レンズ
    『アクロアーマー』ACRO ARMOUR(商標登録出願中)
  • 使用フレーム
    WileyX SHADOW ALT RIMガスケット付き
    ※検証実験で使用したレンズは、上記フレーム用に加工してあります。


3 検証方法

  • 耐重圧度テスト(ハイマスインパクト)
    500gの鉄棒を2mからの落下衝撃テスト
    (ANSI規格では127cmなので、より厳しい条件)
  • 耐高速度テスト(ハイベロシティーインパクト)
    0.2g のサバゲー用BB弾を連射。MAX 0.96j
    (本来は約6mmの鉄球を164kmでぶつけますが、法令上出来ない為)


4 検証実験『耐重圧度テスト』

  •  左の動画の様に「500gの鉄棒」を自由落下させレンズに直撃させました。

    当然、通常のレンズは粉々になりますが、検証レンズで3回繰り返しましたが、ヒビも入りませんでした。
    他社の「1.60素材、中心厚3mm指定、プライマコート無しのレンズ」では、通常厚のレンズと同じく破損しました。
  • ● 耐重圧テスト 1.60素材 通常レンズ(中心厚1.1mm プライマコートなし)
    予想通り、通常の1.60素材レンズは粉々になりました。
  • ● 耐重圧テスト 1.60素材 中心厚3mm プライマコートなし
    同じ1.60素材で中心厚を3mmにしても、プライマコート無しでは通常レンズと変わらず破損しました。
  • ● 耐重圧テスト 1.60素材 中心厚3mm プライマコート
    今回検証する「中心厚3mm」「プライマコート」のレンズでは3回衝撃を与えても、ヒビも入りませんでした。


5 検証実験『耐高速度テスト』

エアガンでの実験を実施。
レンズはフレームで衝撃を緩和されないように固定して実験しました。

【使用した各エアガンのパワー】※0.98ジュール以上は銃刀法違反。
  • 【ハンドガン】
    初速: 54.66m/s パワー: 0.296ジュール
  • 【89式小銃】
    初速: 81.14m/s パワー: 0.658ジュール
  • 【M4カービン】
    初速: 91.11m/s パワー: 0.83ジュール
  • 【海外製】
    初速 95.47 パワー 0.911ジュール
  • ● 耐高速度テスト 1.60素材 通常レンズ(中心厚1.1mm プライマコートなし)
    最もパワーの弱いハンドガン1発で粉々になしました。
  • ● 耐高速度テスト 1.60素材 中心厚3mm プライマコートなし
    中心厚を3mmにした1.60素材(プライマコートなし)の場合も、1発で破損しました。通常レンズと同様に全く強度はありません。
    ※この結果から、1.60素材の強度は厚みよりも『プライマコート』の有無が重要な要素となります。
  • ● 耐高速度テスト 1.53トライベックス素材 中心厚2.5mm 1発ではヒビも入りませんが、連射(4発ぐらい)で表面の破損は有りませんが、裏面の一部が剥離しました。
  • ● 耐高速度テスト 検証レンズ 1.60素材 中心厚3mm プライマコート 耐重圧度テストを実施したレンズを使い(条件を厳しく)、10発撃った後、最低50発の連射をしましたが(※途中、レンズが固定器具より外れたため、再度固定して連射)、ヒビも入らずの状態です。
3回の耐重圧テストを行い、更に銃口から数センチでの50発以上の被弾は、サバゲーではオーバーキルです。また、ハンマーなどで叩いても破損しませんでした。(ページ下部にWileyXの実験動画を張り付けています。)
以上から、検証レンズ『1.60素材』『中心厚3mm』『プライマコート付き』は耐衝撃レンズとしての性能は有ると考えます。
※当店での検証時には実施しませんでしたが、WileyX 土釜氏 の実験では、通常カラー染色レンズは問題ありませんでした。ミラーコートを施した製品は、連射を繰り返すと内面が剥離しました。そのため、『ミラーコートはNG』と考えています。
※ミラーコートについて、その後、検証実験を繰り返した結果、充分な耐衝撃レンズとしての性能があることを確認しました。


6 検証・実験の感想

さすがに「2mの高さからの500g鉄棒落下」では破損すると思いましたが、何度実験しても破損しないのが驚きでした。
今回の実験は、1枚のレンズだけでなく、度数やカーブ、染色など、仕様を変えて10種類程度のレンズで検証しましたが、ミラー加工をしたレンズ以外は、破損することはありませんでした。(WileyX 土釜氏の実験済み)。
「プライマ(耐衝撃)コート」がないレンズでは、中心厚3mmが全く効果がないことが分かり、『プライマ必須+厚み』の要素が重要と認識しました。
普段、「プライマコート」については一切考えていないので、どのメーカーの、どのレンズにプライマコートが入っているか?入っていないのか?全く分かりません。今後はプライマコートの入った他社レンズも検証したいと思います。
遠近両用などの累進レンズでは、アクロライトと同じ仕様で製作される「FFシリーズ カスタム仕様」の耐衝撃性も同等でした。見え方も問題ありません。
メガネレンズをあえて『厚くする』『衝撃を加える』普段考える事がない経験が出来ました。逆に、通常のメガネレンズの脆さも感じました。

【ご注意】
  • 今回、耐衝撃性があると判断した製品は、イトーレンズの「アクロライトシリーズ / FF-iシリーズ(累進)」「1.60素材」「CSコート」「伊藤光学のプライマコート処理」「中心厚3mm」「無色レンズ・カラーレンズ」を満たしたレンズのみです。
    ※検証していない他製品の3mm厚では、耐衝撃性能は無いと判断下さい。
  • レンズメーカー『イトーレンズ』『伊藤光学』が、上記レンズの耐久性を保証しているものではありません。
  • 『れんず屋』が独自に耐衝撃性を確認・判断・販売しています。
  • 2022年11月12日現在、その後の検証実験を経て、「れんず屋」では、「1.67素材」「調光レンズ」「偏光レンズ」「ミラーコート」「防曇コート」「ネオコントラスト」について、一定の条件下で充分な耐衝撃性能があると確認しました。

次回、サバゲーに行った際には、検証レンズを破壊するまで、連射で衝撃を加えたいと思います。『1000発位撃てば破損するかな???』『実際に撃ってみたい方がいれば、貸し出しますよ〜』(古屋)
※その後の実験で、約500発程で破損することを確認しました。


7 検証の背景と今後の販売

この実験を始めるに至った経緯は WileyX 総代理店(株)アトミックインターナショナル 代表 の土釜氏(元空自)が見つけた、海外の論文から始まります。
『耐衝撃用の度付きレンズは加工性や特殊性から高価である事』
『量産のポリカーボネイト素材では、”そり角”のあるフレームでは見え方に問題があること』
などから、アイガードを普及させる手軽なレンズはありませんでした。(耐衝撃性は日本ではあまり重要視されていない。)
ところが、海外の文献にはMR素材でも、中心厚を3mmにしたもので、一切余計なコートをしていないレンズには耐衝撃性能を有すると記載があったようです。(資料は頂きましたが英文なので読んでいません。)
そこで『実際に本当に使えるのか??』『耐久性があるのか??』と検証を始めました。
私自身(元陸自)も、自衛隊の訓練用のレンズが廉価にあれば、普及すると思っていました。以前実施の鉄球テストで、普通のメガネレンズは”僅かな衝撃で破損する”ことは知っていましたが、特に要望が無ければ耐衝撃用のレンズを提案していません(高価なので)。本来、自転車やスポーツなどでは目の保護は必須と認識、また、目を保護できるメガネがある事を知って頂くことは重要と思っていました。
WileyX 土釜氏との検証から、普及の条件となる、『眼鏡店で加工ができるMR素材(1.60/1.67/1.74)』の中で、『最も丈夫な1.60素材』『中心厚3mm指定』『そり角補正が出来る』『プライマコート標準』『手軽な価格』などの条件をクリアしたのが今回のレンズでした。
土釜氏の耐衝撃実験結果を聞き、余りにも凄すぎで信じられず、当店でも検証を実施し、今回の公表と販売を検討しました。

[販売について]
レンズのサイズ(大きさ)の関係で、ガスケットリムタイプと一般的なメガネ枠には加工可能です。8カーブフレームや爪加工が必要なフレームには対応できません。
サバゲーなどで使用し被弾しても、ほぼ破損の可能性がないと考えてリムガスケットタイプのフレームにて提案します。
また、少しでも安全なメガネをご希望であれば、一般のフレームにも加工できます。自転車やオートバイ、格闘、訓練用などで。

[れんず屋 レンズ販売価格(2枚一組税込)※2022年2月現在]
単焦点 内面非球面設計 イトーレンズ『アクロライトシリーズ』 ¥16,000
累進 内面累進設計 イトーレンズ『FF-i カスタム シリーズ』 ¥20,000
※そり角補正付き、中心厚3mm指定、伊藤光学プライマコート処理、CSコート
※カラー染色は+¥3,300

[れんず屋 対応フレーム販売価格一例(税込)※2022年2月現在]
WileyX SHADOW ALT RIMガスケット付 ¥19,800 → ¥17,820


8 眼鏡関係者・同業者の方へ

再度記載しますが、「イトーレンズ」「伊藤光学」がこのレンズの耐久性を保証している事ではありません。(いっさいノータッチです)
「れんず屋」販売分のレンズについては、当社の責任のもとで販売しています。販売に際しては、個々の店舗での責任の下に販売を検討して下さい。

余計なコーティングは耐衝撃性能低下の可能性が高いです。『ミラーコート』や『傷に強いコート(トランジェ)』などは、耐衝撃性能が下がります。偏光レンズや調光レンズは未検証の製品です(多分弱くなると思います)。
※2022年11月12日現在、その後の検証実験を経て、「れんず屋」では、「1.67素材」「調光レンズ」「偏光レンズ」「ミラーコート」「防曇コート」「ネオコントラスト」について、一定の条件下で充分な耐衝撃性能があると確認しました。
プライマコートの無い他社製品では耐衝撃性能の効果が全く有りませんでした。また、上記レンズ以外で『プライマコート有り、3mm厚レンズ』であっても、必ず実験して検証してからの販売を検討して下さい(個々のレンズメーカーのプライマコートは未知数です)。

耐衝撃レンズ全般に言える事は、ヒビが入った製品や、経年劣化した製品などは、使用を中止する事を必ず消費者にお伝えください。
『割れないレンズでは有りません。割れる(破損)事は有ります。』
当店は、情報公開型の店舗です。情報交換やご質問などありましたお気軽に連絡下さい。
今回の検証は WileyX 土釜氏 と、私 古屋が眼の保護をする度付きレンズを『もっと気軽な価格で提案できないか!普及できないか!』との思いで情報公開しています。


WileyX での実験動画