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古屋レポート
 このページはメガネやレンズについての情報や、個人的な見解をご紹介するコーナーです。お客様・同業者・業界関係者の方へ何かの参考になればと思います。
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『れんず屋』代表 古屋 和義
レポート 2015年10月07日『ESS CROSSBOW 度付き対応について』

ESS CROSSBOW 度付き対応について
[アイプロテクション サングラス]



1 ESS?
 Eye Safety Systems
 アメリカに本拠地を置く、Oakley傘下の軍事・警察・消防などに特化したアイウェアメーカーです。
 世界130ヵ国で使用され、米国国防省から戦闘用アイプロテクションとして認定されています。
 日本では、スポーツやサバイバルゲームの愛好家、自衛官の私物として購入されています。

2 アイプロテクション!
 [ANSI Z87.1+]アメリカ規格協会衝撃テスト
 一定以上の基準が確立され、これに合格した製品にしか保険が適用されないなど、職業人の眼の保護を考えています。
 ESS の製品は、実際にはこの基準より厳しいアメリカ軍の衝撃基準にも合格しています。
 海外ドラマでも工事現場などで働いている人や警察・消防官など、必ずメガネをしているのは眼の保護を考えている要素が高いからだと思います。
 日本では保護眼鏡の必要性は余り重要視されていない様です。本来、過酷な条件下では眼の保護は非常に大切な要素だと思います。災害やスポーツ中のトラブルなど、何かが起こった時、その事を考えて保護眼鏡(アイプロテクション)の重要性を考えたいと思います。

3 度付きについて
 ESSのCROSSBOW(クロスボウ)には、3タイプの度付き用『インサート』(レンズの内側にはめる専用パーツ)があります。


 インサートの『P-2B』『U-RX』タイプについては、構造的に眼の近くにレンズ面がくるため使用は厳しいと思います。欧米人仕様のため、日本人ではレンズが当たってしまう方が多数となります。(購入前には必ず確認が必要です。)

4 CROSSBOW VICE RX INSERT(度付き対応用のインサート)
 レンズ面に沿って度付きレンズを装着する構造のため、レンズのそり角が20°以上あります。

2タイプのレンズで見え方を比較しました。
『一般的な球面レンズ』『ソリ角補正レンズ』
両眼で十分に視力 V=1.2 が見える同一度数で比較しました。(片眼でも視力 V=1.2 が見える度数)

比較する内容は
  • 見え方についての全般的な感想
  • 正面視(まっすぐ見たとき)の両眼視力と右片眼視力。
  • 特殊な用途として射撃姿勢(レンズの鼻側上部位置を視線が通る)での右片眼視力。

←射撃時の姿勢。右目の視線はレンズの鼻側上を通る。

【比較体験の感想】
1.『一般的な球面レンズ』(今回の作成度数では3カーブ)
  • 正面視 両眼 V=1.0 右片眼 V=0.7
     両眼で視力は出ていますが、違和感があってオススメ出来ません。
  • 射撃位置 右片眼 V=0.4以下
     ソリ角の影響か?鼻側の側方部では歪んで全く視力が出ません。

2.『東海光学 モードサンク』(そり角補正対応の内面非球面設計、3カーブ)
  • 正面視 両眼 V=1.0 右片眼 V=0.9
     両眼で V=1.0 見えます。一般的な使用では問題ないと思います。
  • 射撃位置 右片眼 V=0.7
     『そり角による違和感は全く問題ありません。射撃姿勢では若干視力が低下します。』※オススメのコーティングは曇り止めの機能が付いた『MFC(メンテナンスフリーコート)』。曇り止めなどのメンテナンスが全く必要がないので、レンズを外して手入れする必要がなくなります。

3.『HOYA NULUX RFスポーツ』(そり角補正 左右眼視線ズレ補正対応 5カーブ)
  • 正面視 両眼 V=1.2 右片眼 V=1.2
     「そり角補正」考慮した最上級ハイカーブレンズ。私には全く違和感がなく綺麗に見えます。
  • 射撃位置 右片眼 V=1.0
     射撃位置でもほとん歪みません。驚きでした!射撃姿勢での右目鼻側の“キワ”での見え方が非常に良く、視力もほとんど下がりません。照星、照門の見出し時の速度低下がありません。

ESS 『VICEインナー』についてのまとめ
  • 見え方を重視される場合には『HOYA NULUX RFスポーツ』がオススメです。
  • 通常の使用でしたら『東海光学 モードサンク』などの「そり角補正レンズ」でも問題ありません。一般的な球面レンズはオススメ出来ないと感じました。
  • ハードな動きをされる方には防曇加工のコートが良いと思います。
  • 『VICEインナー』の視界の広さについては特に気になりませんでした。
  • ノーズパットはそれぞれ専用の物しか使えないので事前に掛け具合の確認をされることをオススメします。

5 CROSSBOW 一眼レンズの度付き交換
 今までは一眼タイプ(右と左に分かれていないレンズ)の度付き加工はできませんでしたが、現在は、ICRXの耐衝撃性に優れた『NXTレンズ』の特殊加工(レンズを左右に分ける加工)で対応が可能となりました。(加工可否の見積もりが必要です。)
 今回は、NXTの調光遠近両用レンズ(SKY Clear)6カーブで作成しました。

  • このレンズ加工をした製品は ESSの認定製品ではなくなります。
  • レンズ自体は耐衝撃性に優れていますが、左右2枚に分けて接着作成する特殊加工のため、耐衝撃基準は満たしていません。
  • レンズを接着して固定するため、レンズの脱着は出来なくなります。
  • レンズサイズの関係上、オリジナルのデザインを変えて加工します。
  • 度数の製作範囲に制限が有り、度数の強い方には対応出来ない場合があります。


【見え方の感想】
  • 正面視 両眼 V=1.2 右片眼 V=1.2
     そり角の影響は全く感じませんでした。
  • 射撃位置 右片眼 V=1.2以下
     射撃位置でほとんど視力低下がありませんでした。
  • 調光レンズ『SKY Clear(グレイ)』の見え方
     コントラストがハッキリするので非常に見やすいレンズです。

【価格・納期】
  • ESS CROSSBOW(クロスボウ)のフレームのみは¥5,400(定価、税別)です。
    ※鼻パッドの変更などは、別途オプション金額必要です。
  • 耐衝撃性に優れたNXTレンズは、単焦点の無色や単色カラーレンズで¥40,000〜(2枚一組税別)+特殊加工代¥5,000となります。NXTレンズについてはコチラ
  • 特殊加工になりますので、納期は3週間〜1ヶ月です。


 今回作成した「クロスボウの度つきメガネ」にご興味が有り、ご覧になりたい方は、事前にご連絡下さい。ご希望の店舗に移動します。フレームのデザインやレンズサンプルを確認して頂き、ご検討下さい。

 保護眼鏡の度付きについては、これからも各種アイテム(度付きのインナーや、ゴーグル対応など)や、近年発売された「そり角補正レンズ」や「防曇レンズ」なども試していきたいと思います。