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古屋レポート
 このページはメガネやレンズについての情報や、個人的な見解をご紹介するコーナーです。お客様・同業者・業界関係者の方へ何かの参考になればと思います。
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『れんず屋』代表 古屋 和義
レポート 2015年12月28日『耐衝撃テスト』

耐衝撃テスト
眼の保護を考えたメガネレンズについて

1 レンズ素材の特性
 メガネレンズの素材は大きく「プラスチック」と「ガラス」に分かれます。現在、一般的なのは「プラスチックレンズ」。「ガラスレンズ」はキズ・熱には強いですが、衝撃による破損の可能性があります。「プラスチックレンズ」は、キズ・熱には弱いですが、「ガラスレンズ」に比べて耐衝撃性に優れています。
※「プラスチック」と「ガラス」の特徴についてはコチラ

 「プラスチックレンズ」の中でも特に耐衝撃性能が高いレンズがあります。簡単に言うと『割れにくい!』レンズです。日本ではあまり重要視されていませんが、アメリカなどでは眼を保護する観点から工事現場や軍隊・警察・消防などの工業基準(規格)が整備されています。映画やドラマでもサングラスやゴーグルなどを見かけませんか?
 [アメリカ工業規格 ANSI Z87+]この規格を合格した製品を使用する事が基準(保険適用)とされています。

耐衝撃レンズは、
  • 『ポリカーボネイト』
  • 『NXT』『フェニックス』『トリロジー』などの名称があるトライベックス素材
  • プライマ(耐衝撃)コート。※衝撃吸収コート。外部からの衝撃を分散させて衝撃を和らげる。
  • 新製品の1.56『ハイベックス』
などがあります。

 今回のレポートは、レンズに127cmの距離から、一定の重さの鋼鉄をレンズに自由落下させたときの耐衝撃性能について確認したいと思います。
※ご注意!!
  • 眼鏡店として衝撃実験について、社内で検証したレポート結果となります。
  • 製品の品質を保証することを目的とした内容ではありません。
 多種多様な眼鏡レンズがある事の一環として、レンズ選択の参考にして頂きたいと思います。


2 実験内容
 127cmの距離から、色々な重さ、形状の鋼材をレンズに自由落下させて、レンズの状態(破損、ヒビ、貫通など)を確認します。軽い鋼材から初めて、破損、またはヒビ、貫通などの状態になった重さで終了します。
使用する鋼材の種類
  • 16.3gの鋼球 → アメリカのFDA規格で使用する重さ
  • 35gの鋼球
  • 135gの鋼材(弾丸形状)
  • 270gの鋼材(弾丸形状)
  • 337.5gの鋼材(弾丸形状)
  • 500gの鋼材(槍形状)→ アメリカ ANSI Z87+ で使用する重さ。


耐衝撃テストをするレンズは、
  • 通常レンズ 1.50、1.60、1.67、1.70、1.74、1.76素材
  • プライマコート付きレンズ 1.60、1.67素材
  • ハイベックス素材レンズ
  • 「ポリカーボネイトレンズ」「NXTレンズ」
  • ワイリーXANSI X87+規格をクリアしたサングラス製品)のレンズ



3 実験結果
○:問題なし。 破損:破損、ヒビ、貫通などが起きた。 −:実験せず
  16.3g 35.0g 135g 270g 337.5g 500g
破損
破損
破損
破損
破損
破損
破損
破損
破損
※レンズ名をクリックすると破損時の画像を表示します。
※上記実験結果は、レンズ度数も一定ではない状態で、回数も少量での実験結果です。精度の高い検証結果では有りませんので、参考程度にお考え下さい。

【実験結果】
  • 通常レンズ
    どのレンズも16.3gの鋼球で破損する可能性があります。

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  • プライマコート付きレンズ
    1.67素材プライマ付きは「337.5g」で割れないケースも多数有りました。1.60素材プライマ付きは「337.5g」では連続3回以上試しても破損しませんでした。
  • ハイベックス素材
    337.5gでも、同じレンズに連続して自由落下を試すと破損しました。ポリカーボネイト素材などと比較すると「レンズの加工性が高いことと、コストが安いこと」が特徴です。
  • 「ポリカーボネイト」「NXT」
    500gでは、レンズ表面に凹みはできますが、レンズ内面にヒビワレや破損は発生しませんでした。同じレンズに重りを2回連続で落としても破損しません。
  • 「ワイリーX製品」
    「ワイリーX」や「ESS」の製品は、アメリカ ANSI X87+ 規格をクリアしています。今回は私が使っている「ワイリーXのWX VAPOR」で耐衝撃テストをしてみました。「ポリカーボネイト」などと同様に、500gでは、レンズ表面に凹みはできますが、レンズ内面にヒビワレや破損は発生しませんでした。同じレンズに重りを2回連続で落としても破損しません。

[実験結果考察]
 ガラスレンズに比べて当然プラスチックレンズは破損・衝撃には強いレンズです。ただしスポーツなどに使用される場合には、より耐衝撃性の高い製品も眼の保護の観念から必要だと思います。
 保護眼鏡として考えた場合には、やはり「ポリカーボネイト」「NXT」「トライベックス」などを選択する必要があります。「プライマコート」と「ハイベックス」はアメリカFDA規格を十分に満たしています。「プライマ(耐衝撃)コート」は製品によって有無が分かれています。ハイグレードのコーティングには標準仕様になっているものも多いです。また、ある大手メーカーは「プライマ(耐衝撃)コート」が入っている製品でも敢えて表記していません。『耐衝撃』性能が「トライベックス」などのレンズと同等性能だとご判断されることを防ぐためです。
 アメリカANSI Z87+規格をクリアしている「ワイリーX」や「ESS」製品のレンズは中心厚が2.2mm以上あります。度付きのメガネレンズでは中心厚は1mm程度ですが、今回の社内実験で「ポリカーボネイト」「NXT」は500gの重りでも破損しませんでした。(※ANSI Z87+規格を合格するかは不明です。)また、高速衝撃テストは検査機関以外では違法な実験ですので出来ませんでした。
 実際には、レンズ度数、フレームの耐久性、加工状態などの条件でも結果が異なると思います。

  • 耐衝撃用レンズとして強度を必要とする専用レンズの場合は、「ポリカーボネイト」「NXT」「トライベックス」が必要。度付きレンズでより強度を求める方には、高価ですが「NXT」「トライベックス」で中心厚を2.5mmなどに増やして作ることも出来ます。※ポリカーボネイトレンズは在庫品のみの為中心厚を増やすことは出来ません。
  • 一般的な使用環境で強度を求める場合には、比較的安価な「ハイベックス」や「プライマコート付き」もよいかと思われます。


4 様々な規格について
[ANSI Z87+]
 アイウエアでは最も厳しいとされるアメリカの工業規格。
 レンズの基本性能である、明瞭な視界を得るための解像度・収差・光軸などの項目や、眼を守るための耐衝撃性能などを規定した規格。特に耐衝撃性は、
  • 『高圧衝撃テスト』
    500gの鋭利な鋼材を127cm(52.1インチ)から落としても破損しないこと。
  • 『高速衝撃テスト』
    直径6.35cm(0.25インチ)の鋼球を高速で当てた時に破損しないこと。
などにクリアすることが必要とされています。

[F.D.A規格]
 アメリカの規格。
 耐衝撃性として、16.3gの鋼球を127cmの高さからレンズに落下させて破損しないことが定められています。
 上記のテスト内容は、日本での一般的なレンズの耐衝撃性のテストとしても使用されています。

[JIS規格]
 日本の規格。眼を保護するために、メガネの種類、形状、強度などが定められています。


5 まとめ
 今回はメガネレンズの耐衝撃性をテーマに実験しました。レンズ専門店としては数十枚のレンズを破損させるのは忍びなかったですが良い経験が出来ました。自分のワイリーXのメガネに重りを落下させる時は特に・・・
 数ミクロンの「プライマ(耐衝撃)コート」でここまで大きく耐衝撃性が向上することに改めて驚かされました。また、実は「プライマコート」が入っているのに表示されていないレンズがあることも発見でした。
 アメリカには、保護メガネの観念があり日本以上に厳しい基準があります。実際には工事現場やスポーツなどで眼の保護を考えることは良いのでは。この機会にレンズ選択の基準のひとつとして耐衝撃性についても検討されるのはいかがでしょうか?